コモン・センス

第24回

本来は発生しないはずの匂いがそこにある。白煙より僅かに早足で歩き、少し後で並んで歩き始めたかと思うとやはり僅かに早足でどこかへ消えていく。鍋蓋を乗せられるのを嫌がる湯気のようにふわっと外へ出ては1秒も経たないうちに消えていく。

第一印象でどれくらいのことを想像しているのだろう?その想像を得た、体や心が影響を受けているもの。顕微鏡で覗いても見えないけど、確かに血肉になった、あるいは、なっていたもの。そういう影響源というのは初めて触れたのに元々自分に備わっていたもののように自然に入り込んでくるので、もしかしたら出会いの衝撃は薄いかもしれない。

「○○に影響を受けた」と、ひとことで言ってもそこから成った形は様々だと思う。

影響源となった何かに感動したために一部をそのまま引用して自分の成句として出す、事が影響を受けることだと思っていた。つまり真似ること。

交錯した意識が水面下でこっそり細胞と友達になって居場所を見つけていく。三角とも四角とも言えない歪な、だけど柔らかく、あたたかい息をしているような。全自動洗濯機を初めて使った細胞はとても喜んだと思う。これ以上汚れの落としようが無いほど我々は清く、そして生来その姿で在り続けたことが証明されたから。そうなるとそれを疑う細胞もいて然り。「何が証明だ」と。洗浄ができるものと思い込み使うから、使い終えた後に清々しい気分に酔っぱらっているだけだ。前提として100%は洗浄できないことを告げていない時点で洗濯機がどう機能しようと汚れている。

昨日今日で知り感動した何かを「ルーツは○○だ」と、断言できるなんておかしい。それはルーツではなく憧れや理想像のようなものだ。一歩先にたどり着きたい地点。百聞は一見に如かずの通り、見てしまうと欲しくなる。そこにたどり着きたくなる。そして真似する。

でもどうしてだろう?同じことをやっても純度が全然違う人がいる。その人にとっては同じ現象も真似ではない。髄液のように体の取締役を務めているルーツがたまたまユニクロのセーターを着て出たら、あっ、被っちゃった、というだけで。

そのルーツを運搬できる配達業者さんに出会えたら素敵な人生になりそうだ。厳重に管理された誰かのルーツ細胞を積み込んだ大型トラックが高速道路を通って玄関まで届けてくれる。梱包を開けた瞬間別人になったように手足の動きを変えて活動を始める。想いは変わらないのに形は変わる。地球が変形しそうだ。地盤沈下した道路に置かれた仮設の信号機は海岸に転がり落ちて、今山として在る突起が友人の頭に刺さっても気にせずにドライアイになり続けることができる。地球規模のスワッピングに中毒者が多数出てくる。者が人かどうかも分からなくなってホテルマンもベッドメイキングをやめてしまうかもしれない。

自分の好きな人が好きだと言うものを盲信的に好きになる。その人のルーツなら!と意気込んで。それもやはり一歩先にたどり着きたい地点に似ている。コレクション魂なるものがうずいて、予算はケチりつつも何とか手に入れたい。でも結局コレクションで終わる。一番悲しい結末。知らないままなら、知った時にフラットな気持ちで向き合えたのに。

ルーツが見当違いであることなんて無いけど、もしそんな風にルーツを操作できたらとても素敵だ。