self portrait

第6回 「From Russia with Love -上を向いて歩こう -」

皆様こんにちは。シリーズでお送りしているサンボワールドカップでのお話ですが、そろそろ試合の方に話題を移しましょう。

試合前日・・・練習用マットを利用して、世界各国の選手とランダムに相対することができるスパーリング(実践練習)は、とても貴重な経験でした。その中でも特に印象に残ったのはモンゴル出身の選手達で、身体は小さくても足腰がとても強靭、まるで電信柱と戦っているかのようです。昨今のモンゴル出身の力士の活躍を観る度に、この日のスパーリングで体感した彼らの強さを思い出さずにはいられません。

試合当日・・・相手は非常に小柄なロシアの選手でしたが、結果は凄まじい強さを味わっての敗戦でした。試合開始直後、相手の腕に軽く手が触れた瞬間、「何か様子が違うぞ」とその強さを確かに感じましたが、その後見たこともないテクニックで肘関節を奪われ、無念のギブアップ。後で地元の子ども達から聞いたのですが、本国では有名な選手のようで、この大会でも圧倒的な強さで金メダリストに輝きました。

 

高校時代にプロレスラーを夢見て上京を志願した際、柔道家の父親から、「まずは大学に入って上の上を見てから考えろ!」と号砲一発、それが大学でサンボを始めるきっかけとなりました。4年目にして首に爆弾を抱え、ドクターストップを発令されながら、奇遇にも叶ったトップとの戦い。これで格闘技人生も遂にロシアでピリオドか・・・。

しかしその後、戦う欲求を自らの力で収めるまで、鎖骨骨折などの負傷にも懲りず、17年の歳月がかかってしまうとは、私は本当に呆れた男なのかもしれません。

 

来るべきラストマッチは2011年5月、相手は現在も活躍中のプロ総合格闘技の世界チャンピオン(当時)でした。大学サンボ部の後輩である彼が、母校にて王者の勲章を引っ提げて練習に参加。私もOBとして参加していたのですが、「上の上の世界」をさらに見たい衝動を抑えきれず、後には引けない一言を遂に発してしまったのです。

「久々に一丁やろうか?」

そしてスパーリング開始わずか3分後、私の右肩を見事に破壊・・・。偽関節(骨折した後、骨融合できなかった状態)であった鎖骨が寝技でつぶされた時、骨が動いて起きた筋断裂のため、再起するにはリスクを伴う身体になりました。

妥協なしに引導を渡してくれた素晴らしき最強のファイターは、格闘技に預けていた肉体に永遠のさよならを、闘魂に永遠の灯を与えてくれました。そして、上の上を見て挑戦し続ける力を、今もなお与え続けております。